東京地方裁判所 昭和39年(ワ)3426号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕右の事実によれば、原告らは土地の賃貸借の存続する限り、賃借権に附随する権利として右通路の使用権を有し、被告は各借地人の借地の通常の使用に必要な限りこれを原告ら賃借人に使用させる義務を負うと認めるのが相当である。ただ右私道は多数の借地人の全体の便宜のために設けられ、共同で使用すべきものであるから、原告らは他の借地人の使用の妨げとなるような方法でこれを使用することはできないとともに、一方被告においても、自分が土地所有者だからといつて、借地人が右の限度を超えない使用をする限りみだりにその使用を妨げもしくは制限することはできないと解すべきである。
しかるところ、被告が昭和三八年六月頃右私道が公道に通ずる付近別紙図面印の個所に抜きさし可能の抗を設け、その後同年一一月一五日には固定抗を設置して自動車の運行を全く不可能にしたことは当事者間に争いがない。
原告らは、前記私道の使用権に基づき妨害の排除を求めるので、被告の右原告に対する通路使用の制除が前述したところに照らしなしうべきものかどうかについて考察する。
前記のような通路の使用は通常歩行を重とするものであることは当然であろう。しかし、近時自動車の利用度は甚だしく高まり、自ら自動車を運転する者でなくても、病人その他の送迎もしくは携行の困難な物品を運ぶため等日常生活において各種自動車の利便に頼る度合は益々増大していることは明らかな事実である。それ故現時において前記の道幅の通路の使用が認められているということのうちには右のような自動車の使用も含まれると解するのが相当である。しかし、一方右のような通路における自動車の使用が頻繁になると、他の借地人の右私道の通行の妨害あるいはは身体の危険をもたらすことも当然に考えられるところであり、もし通路使用の状態がそのような状況になつているとすれば、前記私道使用権は他の共同使用者の便益のために当然制限を受けるべきに至ると考えられる。従つてかような場合は土地所有者たる被告においても右のような通路の使用を受認すべき義務はなく、所有権に基づきこれを阻止又は制限しうると解するのが相当である。(安岡満彦)